液晶絵画展

少し前のことになるが、美術館へ液晶絵画展を見に行った。
会場は幾つかの部屋に仕切られており、液晶モニターあるいは
プロジェクターが設置されて、日本、中国、欧米の作家14名の
映像作品が映し出される。
趣向は様々で、
森村泰昌によるフェルメールを題材にした作品、
中国作家による水墨のアニメーション、
まるで江口寿史のようなポップなイラストをあしらった作品、
中国の寒村の暮らしぶりを犬の生態に注目して6画面で
同時上映するドキュメントなど。
すべての作品を見るのには時間が足りないほどだった。
H氏がもっとも良いなと感じたのは千住博による、
屏風状に配した液晶モニターの中にモノクロの山水が微かな動きを
見せる「水の森」という作品で、木々が風に揺られ、水面を波が伝い、
鳥が画面を横断してゆく。
これらが微かな揺れを伴って画面に展開される様子は、幽玄と呼ぶに
ふさわしかった。
梢の擦れる音と鳥のさえずりがBOSEのスピーカーから流れていた。
他の作品に対してそれほど馴染めなかったのは、緊密なストーリー性の
ない詩的な画面の内奥に、自らの心象風景を重ね合わせて見出す能力が
H氏に乏しいからと思われる。
性急に結果を求めすぎることが災いしているのだろう。
その点、共に見たさぁらさんは十二分に楽しめたようで、このへんは
持ち味の違いということにしておこう。
連休の最終日の午前は、昼からの仕事を控えてブルース・
スプリングスティーンを聴こうと一度は思ったのだけど、
静かな窓の風景に接し、この液晶絵画展のことを思い返して、
梢の擦れる音と鳥の声と、行き交う散歩の人たちの挨拶の声を
音楽のように聴いてみたいとH氏は窓を開け放った。
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