歴史に学ぶ

山田風太郎に『人間臨終図巻』という著作がある。
古今東西の様々な人物の臨終の様子を年齢別に並べてあり、
筒井康隆が書評で取り上げていたので興味をもち高校のとき
手に入れたのだが、
大きい判型、しかも箱入りという立派な装丁は、本棚の中で
とりわけ目立ち、大学に入り友人が下宿を訪れるようになると
決まって驚かれ、呆れられたものだ。
「そんな暗い本読んでるの?」
◇
『人間臨終図巻』ほどではないが、橋本治の『二十世紀』も
かなりへんな本である。
1年1コラム、4ページの形式で、1900年から2000年まで
404ページを使い、二十世紀を総括している。
帯には「あなたと歴史が、本書(ここ)でつながる!」とあり、
僕が生れた1971年を見てみると、
「繁栄の時代をになう大衆の年-【大衆元年】」と位置づけられ、
①格式の高いはずの銀座にファストフードのマクドナルドが開店
②多摩ニュータウンへの入居が開始される
③新宿で日本初の超高層ホテル(京王プラザ)が営業開始
というその年に起こった3つの事実が意味するところを解説してゆく。
◇
一気呵成に読む本ではないと感じたので、入浴時にタオルで
包んで1年ずつ、たまたま開いた頁から読んでいる。
先日開いた【1956年】の頁では「もはや戦後ではない」という
キーワードが取り上げられていた。
この年の『経済白書』が使い、やがては流行語にもなったという
言葉の意味は、
敗戦から10年が経ち、経済的に【復興】を目指す時期は終った。
これからは【成長】というべきである、という宣言だった。
しかし「もはや戦後ではない」を最初に使ったのは英文学者の
中野好夫だったという。
経済白書では脱皮すべき戦後の10年間を指していた言葉だが、
中野好夫は次のような文意で使っていた。
・昭和20年の敗戦以後に起こった雑然たる現象をすべて
【戦後】という言葉でくくり、なんでも【戦後】だからで特殊化
するのはいい加減にやめよう。
・日本には【戦前】の状態をノーマルと見なし、【戦後】を
そこからはずれた異常時期とする風潮が明らかにある。
・現在を【戦後】として特殊化せず、この現実を前提とした
未来を考えるべきだ。
つまり中野好夫は【戦後】を肯定的に見た上で未来の建設を
訴えているわけであり、その点が経済白書と異なると
橋本治は指摘している。
◇
僕がこれを読んで思ったのは、バブルについてであり、
高度経済成長期についてである。
経済は回復の兆しが見えたとか見えないとか言っているが、
これらの物言いは日本が後先考えずに煌めいていた時代を
【良】とし、そこに戻ることを前提としているように聞える。
経済に興味をもたずに大学生活を送り、就職した時に
すでにバブルがはじけていた僕には、
頑張れば、政治が良くなれば元に戻れると考えるほうが
不思議で、そろそろ現況を把握して今に基づいた未来を
考えるべきであると、そのまま中野好夫の言説を引用
したくなる。
【戦前】を【好景気】に、【戦後】を【不況】に置き換えてみれば
なんと説得力のあることだろうか。


Comments
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Posted by: FruileNailelf | 2009.03.23 at 08:17 PM